女友達が俺に言った。
「キャバ嬢はいいなぁ。ニコニコして座ってるだけで金になるんだから。」
俺は
「そうかな?あれもある種の営業だと思うけどなぁ。」
キャバクラ「クリスタル」に1人の超絶美女が入店した。千夏。21歳。
マネージャー「千夏ちゃんは美人だから、あっという間にナンバーワンになっちゃうよ!」
と、太鼓判を押す。
デビュー当初、どんどん指名が入った。ただの美人でなく、愛嬌もあるので客も喜んでいた。
しかし、なかなかリピーターがつかない。千夏は悩んでいた。そこで、マネージャーに
「ナンバーワンの彩さんのヘルプをやらせてください。」
と申し入れた。
彩「千夏ちゃん、悩んでるんだって?私なんかが参考になるかなぁ。」
千夏「彩さん、今日からよろしくお願いします。」
ふと彩を見ると、脇に新聞を挟んでいた。
「日経新聞」
千夏「そんなの読んでるんですか?」
彩「ああ、証券マンのお客さんもいるから一応読んでるのよ。」
控え室。彩が何やら一生懸命読み込んでいる。
千夏「それ何ですか?」
手帳にギッシリと文字が並んでいる。
彩「ああ、今日来てくれるお客さんのデータを確認してたのよ。」
よくよく見ると、趣味、特技、好きな酒、勤務先、年収など事細かに書き留めてある。
開店。直ぐに彩の指名が入る。
「彩さーん!2番テーブルご指名入りました!」
彩「友さーん!久しぶりじゃないですか!寂しかったんですよ~!」
客「いやぁ、ちょっと最近忙しくてさぁ。」
彩「ベトナムの事業、好調じゃないですか!」
客「おっ!さすが彩ちゃん。情報早いね~」
彩「株価も年初来高値更新ですよねー!」
客「そんなことまで知ってんの?スゲエなー!」
こんな努力の上にナンバーワンという称号があるなんて千夏は思いもしなかった。ただ、客の話にニコニコうなづいていればいいと思っていた。可愛い子と酒を飲み、たまにエッチな話をするのがキャバクラの客だと決めつけていた。
どうだろうか?先程の営業マンの松本と、このキャバ嬢の彩。同じじゃないか?職種は違えど、いかにして客の懐に入ろうかと考えれば方法は同じだと言う事だ。